昭和女子大学_現代教育研究所_EduMate_Vol1
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る生徒達は、「意味がない」「役にたたない」と、どんなワークもレッスンも一蹴、そんなときでした。なぜか、私は、語りはじめていたのです、「世界に耳を傾ける」レッスン「音の風景」「原っぱ」での「木の声を聴く」ワーク、そのときです、生徒が聞きました「先生、それで、木の声聞こえたん?」「ううん、だめだった、ジーって音だけ」「そりゃ、虫の声じゃ」「自分の耳だけで木の声聞くのは無理じゃ」「聴診器使ったら、樹液の音、聞こえたよ」そこからでした。「木の声」を「聴く」は可能なのか、ほんとうに「木の声」が聴けるのならば、小学生とのタイアップ授業「総合学習」で挑戦しよう、議論がはじまったのです。生徒達のモチベーションをドライブさせた「木の声を聴く」授業、農高生が先生となり小学1年対象の総合学習で行うことが決まりました。授業をデザインした彼らは、「国語表現」の中で小学校の教師向けプレゼンの練習も始めました。「最近の子どもの世界はテレビゲームなど仮想世界が広がっています。バーチャルリアリティの中ではボタン一つで人を傷つけ、殺すことができ、逆にリセットボタン一つで命を復活させることも可能です。そんな子どもたちに自然の不思議さ面白さに興味・関心をもってもらい、命の尊さに気づくことをねらいとして木の声を聴く授業を考えました。命を実感することができるように、自作の聴診器を使います」農高生の授業は小学生を夢中にさせました。聴診器を使い小さな木の鼓動を聞くことができた子どもたちは口々に叫びます。「聞こえた」「すごい」「『コーッ』という音がするよ」。小学生が去った後の教室で、ぼそっと語った高校生の言葉が今も私の中に響きます。「先生、【ドクドクって聞こえた】って言ってた子どもはね、本当は、思いこみで間違った音を聞き取ってるんじゃ。じゃけどね、間違いであっても、命を実感した気になり感動しとる、おれは、それでええと思うた。もっと生きとるものをさがしたいって、聴診器もってウロウロしとるのみたら、おれ、うれしかった。これがきっかけで、命についてもっともっと学びたいって思うてくれたら、大成功じゃ~」こう語っ たS君は今、農業高校の教師です。そのS君から先日こんなメールが届きました。「先生、昨日キャリア教育の授業しながら、ぼくも、自分の人生を振り返ってみました。人 ◇ ◇ 生を図式化してライフラインを描く、先生から教わったあの図式です。やってみたら、僕のライン、トップの山は高校時代でした。小学生を相手にいろいろやった総合の授業、木の声、においレストラン、野菜の主張、わたしは農高の牛……あれが今の僕の原点だと、教室の生徒達にも話しました。ぼくが大学生になってめちゃくちゃ勉強した本当の理由、それは小学生の質問に、ちゃんとこたえることができなくて悔しかったからです。そして、教員採用試験の前にNGO活動でベトナムにいったのも、自分の見方・考え方がちっぽけだということを自覚していたからです。……」メールの最後に「今日思い出した先生の言葉、私はワクワクしながら生きていきたい、だから、いま、わたしが知りたいことを本気で追っかける、だって世界は、センス・オブ・ワンダーだから」メールが想起させてくれた「私の学びの冒険」。それが私にこう語りかけます。「人は時々刻々と変わっていく不思議な生き物、だからこそ、「今」の生き方が、未来のわたしを大きく変える。」過ぎ去った過去が、今の「わたし」を作るように、過去と未来の間に「今」が存在することを忘れず「人生をいかにいきるか」そんなキャリア教育への冒険の旅、ぜひご一緒に。15◇青木 幸子(昭和女子大学総合教育センター准教授)(右図)S君のメールに登場する「野菜の主張」の絵。この作品つくりを契機に「なるぞ、教師」と思ったそうです。

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